“業務の内容が明確に伝わる文”の書き方

「内容が明確に伝わる技術文書の書き方」の考え方を使った技術士二次試験対策です。具体的には,「ルール6:明確に伝わる文を書く」を使った業務の内容が明確に伝わる「業務内容の詳細」を書くための文の書き方の解説です。

「業務内容の詳細に何を書くのかではなく「業務の内容を明確に伝えるためにはどのような文の書き方をしたらよいか」に重点を置いた内容です。

1.「ルール6:明確に伝わる文を書く」について

「6つのルールと18の書き方」注1)の中の「ルール6:明確に伝わる文を書く」には以下の6つの書き方があります。
_①書き方13:具体的な文を書く
_②書き方14:意味が明確な文を書く
_③書き方15:能動態の文を書く
_④書き方16:短い文を書く
_⑤書き方17:肯定文を書く
_⑥書き方18:文法を守って文を書く

【6つのルールと18の書き方】

ルール 書き方と内容
ルール1 冒頭に書く 書き方1 要点を冒頭に書く
書き方2 全体像を冒頭に書く
書き方3 枠組みを冒頭に書く
ルール2 ペアで書く 書き方4 根拠を書く
書き方5 条件を書く
ルール3 分けて書く 書き方6 かたまりに分けて書く
書き方7 箇条書きで書く
書き方8 表で書く
ルール4 視覚的に書く 書き方9 写真や図を入れて書く
書き方10 強調して書く
書き方11 まとまりを持たせて書く
ルール5 合わせて書く 書き方12 組み合わせて書く
ルール6 明確に伝わる文を書く 書き方13 具体的な文を書く
書き方14 意味が明確な文を書く
書き方15 能動態の文を書く
書き方16 短い文を書く
書き方17 肯定文で書く
書き方18 文法を守って文を書く

_注1):「6つのルールと18の書き方」とは,「内容が明確に伝わる技術文書の書き方の技術」の一つです。

これらの中で,業務の内容を明確に伝えるうえで特に重要な文の書き方として以下の書き方を解説します。

_①書き方13:具体的な文を書く
_②書き方15:能動態の文を書く
_③書き方16:短い文を書く

2.業務内容の詳細での書き方

2.1 書き方13:具体的な文を書く
「書き方13:具体的な文を書く」とは,文を読んだときその内容が頭の中に浮かんでくるような具体的な文を書くことです。

以下のⅠの文を読んでください。

Ⅰ:解析の結果,未対策での近接施工では橋梁基礎の変位量が許容変位量を大幅に越えたため対策工の選定が課題となった。

次に,Ⅱの文を読んで下さい。

Ⅱ:解析の結果,未対策での近接施工では橋梁基礎の変位量が許容変位量(水平方向および垂直方向で5mm)を大幅に越えたため(水平方向:40mm,鉛直方向:25mm)対策工の選定が課題となった。

Ⅱの文のように具体的な内容の文で書くことで業務の内容が頭の中に浮かんできます。つまり,業務の内容が明確に伝わります

2.2 書き方15:能動態の文を書く
「書き方15:能動態の文を書く」とは,書き手が「考えたこと・判断したこと・思ったこと」を書く場合には能動態の文を書くことです。

以下のⅢの文を読んでください。

Ⅲ:トンネル上部のコンクリートが幅20cm×長さ10cm程度の大きさで数か所剥落していた。このため,通行車両の安全確保のため,トンネル内の補修工事を早急に実施する必要があると判断された。

この文は,「判断された」受動態の文で書いてあります。受動態で書いてある文を読むと,自分の考えを明確に言い切ることを避けているように受け取れます。また,自分の考えに自信がないように受け取れます

次に,Ⅳの文を読んでください。

Ⅳ:トンネル上部のコンクリートが幅20cm×長さ10cm程度の大きさで数か所剥落していた。このため,通行車両の安全確保のため,トンネル内の補修工事を早急に実施する必要があると私は判断した。

この文は,「私は判断した」能動態の文で書いてあります。能動態で書いてある文を読むと,自分の考えを明確に言い切る姿勢や自分の考えに対する自信が読み取れます

業務の内容(成果)に対する自信を読み手(試験官)に伝えるため,業務内容の詳細に「自分が考えたこと・判断したこと・思ったこと」を書く場合にはこれを能動態の文で書いてください。能動態の文で書くことで業務の内容が明確に伝わります

2.3 書き方16:短い文を書く
「書き方16:短い文を書く」とは,簡潔でスリムな短い文を書くことです。ここでは,短い文を書く方法として「一文一義で書く」について解説します注2)。一文一義とは,一文の中に1つのこと(事柄)だけを書くことです。
_注2):短い文を書く方法として,この他,「表現を工夫する」「内容を言い換える」などの書き方があります。

以下のⅤの文を読んでください。

Ⅴ:当初,鋼矢板による二重締切を考えたが二重締切では与条件の河積を確保できなかったので,与条件の河積を確保するため,地盤改良工法(高圧噴射工法の全置換と薬液注入工法)を併用した自立式鋼矢板(Ⅳ型)の一重締切を提案した。

この文は一文一義で書いてありません。1つの文の中に2つのことが書いてあります。2つのこととは以下の内容です。

①与条件の河積を確保できなかったこと
②自立式鋼矢板(Ⅳ型)の一重締切を提案したこと

この文を一文一義で書いたⅥの文を読んでください。

Ⅳ:当初,鋼矢板による二重締切を考えたが二重締切では与条件の河積を確保できなかった。そこで,与条件の河積を確保するため,地盤改良工法(高圧噴射工法の全置換と薬液注入工法)を併用した自立式鋼矢板(Ⅳ型)の一重締切を提案した。

一文一義で書くと,個々の文の内容がそれぞれ独立して頭の中に入ってくることから業務の内容が明確に伝わります。

ここでは,「書き方13:具体的な文を書く」「書き方15:能動態の文を書く」および「書き方16:短い文を書く」を使って業務内容の詳細を書くことについて解説しました。この他,「主語と述語が一致する文を書く」「修飾語と被修飾語の関係が明確な文を書く」など,文の書き方の基本事項も踏まえたうえで業務内容の詳細を書いてください。

文の書き方に留意して書くと,内容が明確に伝わる業務内容の詳細を書くことができます。

3.参考図書

森谷仁著,「マンガでわかる技術文書の書き方」,オーム社,令和4年3月25日
*ここで解説した書き方以外の文の書き方についても詳しく解説しています。「業務内容の詳細」を書くときの参考にしてください。

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