試験官に業務内容が明確に伝わるように「業務内容の詳細」を書いてください。業務内容の詳細は,自分の技術力を試験官に示す重要なプレゼンテーション資料です。また,業務内容の詳細で書いた内容は口頭試験での質問対象になります。
ここでは,「『試験官に内容が明確に伝わる業務内容の詳細』の書き方」のポイントとして以下の項目について解説します。
Ⅰ.業務内容の詳細を書くときのポイント
(1)記載項目について
(2)掘り下げて書く
(3)具体的な内容を書く
(4)内容がねじれた業務内容の詳細を書かない
Ⅱ.業務内容の詳細の具体的な書き方
(1)業務の棚卸をする
(2)業務の棚卸の利点
(3)各項目の要点を考える
(4)要点の説明を考える
(5)業務内容の詳細の書き方の手順
(1)記載項目について
日本技術士会が公表している「令和3年度・技術士第二次試験受験申込み案内」の中に書いてある「目的,立場と役割,技術的内容及び課題,技術的成果」の4項目を記載項目としてください。ただし,「技術的内容及び課題」では,課題だけではなく業務を進めるうえでの問題も書いてください。問題があって課題があるからです。課題だけが単独で出てくることはありません。また,「技術的成果」では,技術的解決策も書いてください。技術的成果とは技術的解決策を行った結果出てくるものだからです。
(2)掘り下げて書く
①思考の過程を書く
業務内容の詳細には思考の過程を書いてください。例えば,技術的解決策を書くときに「〇〇という課題に対して□□をした」だけではなく,「△△と考えて□□をした」のような思考の過程を業務内容の詳細に書いてください。思考の過程(着目点)を明確にすることも技術士に求められる能力です。また,業務内容の詳細に思考の過程を書くことで自分の技術力の独自性を示すことができます。
②成果を評価する
成果を評価してください。例えば,「補修工事は計画通り5日間での短期施工ができた」とだけ書くのではなく,「短期施工に伴う構造変更で舗装の損傷が懸念されたが4年後の現在も舗装の変状がない。このことから,今回考えた対策が妥当であることが証明できた。今後は,他の現場にでもこの技術を応用したいと考えている」のように書いてください。成果を言いっ放しにしないでください。成果に対する評価を書くことで自分の考えの妥当性を証明することができます。
(3)具体的な内容を書く
業務内容の詳細には具体的な内容を書いてください。例えば,以下の2つの文を読んでください。これは,技術的成果を書いた文だと考えてください。
A:技術的成果は,提案した対策で高齢者ドライバーの事故数を大幅に低減できたことだ。
B:技術的成果は,提案した対策で高齢者ドライバーの事故数をピーク時の約1/3に低減できたことだ。
Aの文は,技術的成果がぼんやりと伝わります。「大幅に低減できたこと」が不明確です。これに対して,Bの文は,技術的成果が明確に伝わります。「ピーク時の約1/3に低減できたこと」と具体的な成果を書いているからです。業務内容の詳細を書くときには常に「具体的な内容を書く」という意識を持ってください。
(4)内容がねじれた業務内容の詳細を書かない
「内容がねじれた業務内容の詳細」とは,課題・解決策・成果の内容がねじれている業務内容の詳細のことです。業務上の課題・解決策・成果はすべて関係しています。「課題に対する解決策,解決策に対する成果」です。
ねじれている業務内容の詳細とは例えば次のようなことです。課題の中に工事費のコスト削減に関することが書いてないにもかかわらず,成果の中に「工事費のコストの削減が達成できた」と書いてあることです。
(1)業務の棚卸をする
このような内容がねじれた業務内容の詳細を書く理由の1つは,「課題は課題,解決策は解決策,成果は成果」のようにこれらをバラバラに考えていることがあります。
*課題は何だったかなあ?
*解決策は何だったかなあ?
*成果は何だったかなあ?
この対策として,業務内容の詳細を書く前に業務の棚卸をしてください。業務の棚卸とは,業務で行ったことをノートなどに書き出すことです。
業務の始めから終わりまでで行ったことを一つひとつ順番に自問自答しながらノートなどに書き出してください。
例えば,
*目的と方針は何か
*立場と役割は何か
*具体的にどのような検討を行ったか(検討項目は何か)
*どのような手順で業務を行ったか
*業務上の問題と課題は何か
*課題を考えるときの条件はあったか
*検討条件(設計条件)は何か
*課題に対する技術的解決策は何か
*なぜ,このような技術的解決策を考えたのか
*具体的にどのような結果が出たか
*解決策に対する成果は何か
*結論に至った経緯は何か
*成果をどのように評価するか
*今後の課題はあるか・・・など
頭の中にあることをすべて書き出したら,書いたことを読み返し,業務の始めから終わりまでのことを確認してください。これは,業務というストーリーを始めから終わりまで確認することです。
(2)業務の棚卸の利点
業務の棚卸には以下のような利点もあります。
①業務の棚卸をすることで,業務内容の詳細を提出したあと「アッ〇〇を書き忘れた」というミスを防げます。
②業務の棚卸は口頭試験対策も兼ねています。口頭試験では業務内容の詳細に書いたことに関しての質問があります。業務で行ったことをすべて書き出しておけば(整理しておけば)口頭試験の対策にもなります。
(3)各項目の要点を考える
各項目の要点を考えるとは,「目的,立場と役割,技術的内容及び課題,技術的成果」の4項目(問題と技術的解決策を含む)の要点を考えることです。目的の要点,立場と役割の要点,技術的内容の要点,課題の要点,技術的成果の要点(問題の要点と技術的解決策の要点を含む)を考えます。
例えば,課題の要点とは以下のような内容です。
厳しい施工条件の中での補修工法の選定と施工計画の立案が課題
すなわち,課題の要点とは,課題を一言で言ったことです。4項目の要点を考えることとは,目的,立場と役割,技術的内容,課題,技術的成果を(問題と技術的解決策を含む)一言で言ったことを考えることです。
(4)要点の説明を考える
4項目の要点を考えたら要点の説明を考えてください。例えば,先ほど書いた課題の要点の説明を考えると以下のようになります。
厳しい施工条件の中での函渠の健全性確保のための補修工法選定と施工計画の立案が課題であった。具体的には,通水断面を確保するため支保工を函渠内に設置できないこと,交通量が多い道路下での施工となるが昼間の全面通行止めができないことが施工条件であった。
すなわち,要点の説明を考えるとは要点に肉付けをすることです。各項目に対しての要点とその要点の説明を考えてください。
(5)業務内容の詳細の書き方の手順
ここまで解説した手順で業務内容の詳細を書いてください。この手順で書くことで,試験官に内容が明確に伝わる業務内容の詳細を書くことができます。また,ねじれのない業務内容の詳細を書くことができます。
業務内容の詳細を書くうえでの手順は以下通りです。
①業務の棚卸をする
②各項目の要点を考える
③要点の説明を考える
④要点と要点の説明に基づき業務内容の詳細を書く
ここで解説したことを参考にして,「試験官に内容が明確に伝わる業務内容の詳細」を書いてください。