今回も,前回に引き続き,「伝える内容を明確に理解していること」に関する解説です。今回は,「理解したつもり」と「理解している」について深掘りします。「理解したつもり」とは,自分は理解していると思っていても実際は理解していないことです。
■「理解したつもり」と「理解している」
例えば,住宅を造るための様々な工法を紹介する本に「〇〇工法は木造住宅だけに適用できる」と書いてあったとします。この内容を読んだとき,「〇〇工法とはそのような工法なのか」という程度での理解ならば〇〇工法に対して「理解したつもり」という状態です。
「〇〇工法は,なぜ,木造住宅だけに適用できるのですか? 技術的な根拠は何ですか?」などの質問をされたとき,〇〇工法について「理解したつもり」なので回答できないからです。
これに対して,「〇〇工法は木造住宅だけに適用できる」という内容を読んだとき,「なぜだろう?」と考え,「木造住宅だけに適用できる技術的な根拠や鉄筋コンクリート造住宅には適用できない技術的な根拠」などを調べたりあるいは考えたりするならば〇〇工法に対して「理解している」という状態です。
「〇〇工法は,なぜ,木造住宅だけに適用できるのですか? 技術的な根拠は何ですか?」などの質問をされても,〇〇工法について「理解している」ので「△△です」と明確に回答できるからです。
■業務報告書に書くことを考える
業務報告書の中に〇〇工法について書くことを考えてください。
〇〇工法について「理解したつもり」では,「〇〇工法は木造住宅だけに適用できる」程度の内容しか書けません。この内容では〇〇工法の内容が明確に伝わりません。この内容を読んでも,「〇〇工法は,なぜ,木造住宅だけに適用できるのか? 技術的な根拠は何?」などの疑問が残るからです。
これに対して,〇〇工法について「理解している」ならば,「木造住宅だけに適用できる技術的な根拠や鉄筋コンクリート造住宅には適用できない技術的な根拠」などの内容を書くことができます。このような内容を書けば〇〇工法の内容が明確に伝わります。
書き手が「理解している」状態で書いた技術文書を読むことで内容が明確に伝わります。内容が明確に伝わる技術文書を書くためには,書き手が,「伝える内容を明確に理解していること」を認識する必要があります。
次回に続きます。
【参考文献】
森谷仁著,「マンガでわかる技術文書の書き方」,オーム社,令和4年3月25日