曖昧な表現

昨日,ある新聞の朝刊の一面に以下のような見出しの記事が載っていました。

職場接種 非正規・派遣も
厚労省 雇用形態で区別認めず

また,この記事の中で,「企業などに職場接種を認める要件」として以下の5項目が書かれていました。

●医療従事者,事務スタッフらは企業が自ら確保する(市町村に影響を与えないようにする)●接種会場や会場運営に必要な備品は企業が自ら確保する
●同一の接種会場で2回接種を完了する。同一の接種会場で2000回程度(1000人程度×2回)行うことを基本とする
●雇用形態によって一律に対象者を区分することは望ましくない
●接種を強要することがないよう留意する

*厚労省作成の職場接種向け手引きを基に作成

この5項目を見て違和感を持ちました。5項目の文の語尾は以下の通りです。

●・・・確保する
●・・・確保する
●・・・完了する。・・・基本とする
●・・・望ましくない
●・・・留意する

4項目以外は,すべて語尾が「・・・する」のように内容を言い切っています。4項目だけが「望ましくない」という曖昧な表現です。原文もこのような内容(表現)なのかを知りたかったので厚生労働省のウェブサイトで原文を調べてみました。

⑥職域接種の接種対象者に関しては,各企業における接種能力や職場におけるクラスター対策等の観点に応じ,雇用形態によって一律に対象者を区別することは望ましくないという趣旨を踏まえつつ,公平・適切に判断すること
出典:新型コロナウイルス感染症に係る 予防接種の実施に関する職域接種向け手引き(初版)・令和3年6月8日

原文では,「・・・公平・適切に判断すること」と内容を言い切っています。これで納得しました。

「雇用形態によって一律に対象者を区分することは望ましくない」と書くと対象者の区分の判断を企業に委ねている意味になります。これでは,この内容は「要件」になりません内容を言い切っていないからです。要件とは「条件」と言い換えることができるからです。相手に判断を委ねる内容は要件(条件)ではありません。

セミナーや社員研修の中で,「文を書くときには以下のような曖昧な表現を使わないこと」と解説しています。これらの語句を使うと文の内容が曖昧になるからです。

*適宜に
*必要に応じて
*状況に応じて

例えば,「仕事の進捗状況を田中部長に適宜報告すること」というメールが届いても田中部長にいつ報告したらよいのかわかりません。
「仕事の進捗状況を田中部長に一週間ごとに報告すること」
のように具体的に書くことでこの文の内容が明確になります。

しかし,「雇用形態によって一律に対象者を区分しない」ように内容をなぜ言い切らないのでしょうか?

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