技術者の倫理:“公衆の安全”

先日,会社の本棚で本を探していたら技術者の倫理に関する本が出てきました。

“「君ならどうする?」 建設技術者のための倫理問題事例集(公社)地盤工学会編”

という本(小冊子)です(こちら)。

技術士第二次試験の総合技術監理部門を受験するとき,受験勉強のため技術者の倫理に関する参考図書を数冊購入しました。この本はその中の1冊です。技術者の倫理を勉強するうえでの入門編のような内容です。

この本の中には,倫理問題事例が事例1~事例12まであります。建設関係に従事する技術者が実際に遭遇するような倫理の問題に関することを問題形式で提示しています。ただし,すべて架空の内容です。

事例12は,「誰も通らなくなった歩道」というテーマですが,以下のような内容です。


ある地方で,町から離れた数件の農家から,道路に歩道を付けてほしいとの陳情があった。その中に住む3人の小学生はその道路を通学路としていたが,その道路には大型車も混入するため通学には危険が伴った。そのため,安全に通学できる歩道が必要だったからである。

歩道を造る用地は確保できるが,町役場には歩道を造る予算がなかった。歩道を造っても通るのは主にこの3人だけであった。このため,費用対効果にも疑問があった。また,3人が小学校を卒業すればほとんど誰も通らない歩道になる。

町役場の担当者は,歩道を設けないで安全に通学できる対策を考えたが,小学生の親たちは歩道の設置を要求してきた。また,万が一交通事故が発生すれば,町役場の責任問題になる。

そんなとき,国の補正予算で地域経済活性化事業を行うことになり,その1つとして,地方道の歩道整備事業に補助金が出ることになった。

そこで,補助金を受けることを計画しその申請をしたら申請が通り歩道整備工事ができた。

その結果,3人の小学生が安心して通学ができるようになった。そして,数年後,誰も通らない歩道が残った。


このような事例に対して,様々な視点から,「君ならどうする?」と問いかける問題が出されています。

日本技術士会などの団体(組織)の中には“公衆の安全”を倫理規定の中に明記しているところがあります。


■公益社団法人日本技術士会・技術士倫理綱領

【基本綱領】
(公衆の利益の優先)
1.技術士は,公衆の安全,健康及び福利を最優先に考慮する。


■日本機械学会倫理規定

【綱領】

1.技術者としての社会的責任

会員は,技術者としての専門職が,技術的能力と良識に対する社会の信頼と負託の上に成り立つことを認識し,社会が真に必要とする技術の実用化と研究に努めると共に,製品,技術および知的生産物に関して,その品質,信頼性,安全性,および環境保全に対する責任を有する。また,職務遂行においては常に公衆の安全,健康,福祉を最優先させる。


■日本原子力学会倫理規定

【憲章】

2.(公衆優先原則・持続性原則)
会員は,公衆の安全をすべてに優先させて原子力および放射線の平和利用の発展に積極的に取り組む。


公衆を辞典で調べると,以下のような意味が書いてあります。
出典:岩波国語辞典(第5版)

公衆:社会一般の人人

事例12は,3人の小学生が対象となった内容でした。

小学生3人は,“公衆”に相当するでしょうか?

“公衆”とは何でしょうか?

なぜ,倫理規定の中に,“公衆の安全”が入っているのでしょうか?

簡単に答えが出そうですが,掘り下げて考えると,簡単に答えが出ないのではないでしょうか・・・。

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