これまでに読んだ本から(5冊目):【間違いだらけの学習論】

今回は,「間違いだらけの学習論」の紹介です。

「間違いだらけの学習論(なぜ勉強が身につかないか):西林克彦:新曜社」

この本は最近読んだ本です。

ジュニア向けの心理学の本を読んでいたら,この本の内容が引用されていたので早速購入して読みました。非常に面白い本でした。

例えば,以下のような内容があります。


・・・・・「眠い男が水差しを持っていた」,「太った男が錠を買った」といったような,ある特定の特徴を持った男が,ある行動をする文をいくつか記憶させる実験です。
このような文をいくつも憶えさせられると,被験者は,どの男が何をしたのだったかがわからなくなってきます。ある特徴を持った男とその行動との間に必然性がないわけですから,丸暗記するしかないのですが,なかなか記憶できるものではありません。
しかし,「眠い男がコーヒーメーカーに水を入れるために水差しを持っていた」,「太った男が冷蔵庫の扉にかける錠を買った」という文だと,男の特徴と行動との間に,それなりの必然性がつけ加えられ,暗記しやすくなります。このように必然性をつけ加える作業は「精緻化」とよばれ,これを行うことによって,記憶は飛躍的に上昇します。


小学校や中学校時代,歴史上の出来事の年代を語呂合わせで憶えたことがあると思います。

*1192年・・・いい国作ろう鎌倉幕府・・・鎌倉幕府が成立した年

これも精緻化のようなものだと思います。

また著者は,この必然性は認知構造が関係していると説明しています。ちなみに,この本では認知構造を以下のように定義しています。

認知構造というのは,それまでにその有機体(人も人以外の動物も)が持っている知識の総体という意味で,進化の歴史の中で獲得された種に固有な生まれつきのものと,それぞれの個体が後天的に経験の中から獲得したものから成っていると考えられます。

「眠い男」と「水差しを持っていた」との間には必然性はありませんが,「眠い男」と「水差しを持っていた」の間に「コーヒーメーカーに水を入れるために」という語句が入ると,両者の間に必然性が出てきます。

これまでの経験から,眠いときには眠気覚ましにコーヒーを飲むことがあります。また,コーヒーメーカーでコーヒーを作る場合には,水とコーヒーの粉を入れることも知っています。すなわち,このような経験が認知構造として獲得されます。

したがって,「眠い男がコーヒーメーカーに水を入れるために水差しを持っていた」の内容に必然性が出るので,この文が記憶されやすくなります。

しかし,コーヒーに眠気覚ましの効果があることや,コーヒーメーカーでコーヒーを作る場合には水とコーヒーの粉が必要なことを知らない人は,この文が記憶されにくいと思います。このような認知構造がないからです。

「太った男が冷蔵庫の扉にかける錠を買った」も同様に考えることができます。

この本には,わかりやすい文書を書くときや技術士試験での受験勉強方法を考えるときに参考になる内容が書かれています。今後これらをテーマにしたブログを書くときにこの本の内容を必要に応じて引用したいと思います。

ブログの冒頭で,「ジュニア向けの心理学の本を読んでいたら」と書きました。

「わかる」と言う行為は心理学と密接な関係があります。特に,認知心理学です。

「わかる」ということを学ぶため,心理学の本を読むこともあります。「ヘーっ」とか「なるほど」と独り言を言いながら心理学の本を読んでいます。これまでに読んだ心理学の本の中で,「わかりやすい文書の書き方」の参考なる内容は講習会の中でも紹介しています。

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