一般の人々の中で,技術士という資格の知名度は低いです。「技術士って何?」という方がほとんどだと思います。残念ながら・・・
逆に,建設関係,特に土木関係の仕事をしている方の中では,技術士という資格の知名度は高いです。仕事の受注に関係する資格だからです。
10年ぐらい前,弊社に技術相談に来られた方がいました。建設関係とは無関係の一般の方でした。「家の近くでトンネルの工事を行うが,自分の家に対してどのような影響があるのかを知りたい」というのが相談内容でした。
その方に「技術士(総合監理部門/建設部門)」と書いてある名刺をお渡ししたら,「技術士とはどのような資格ですか?」と聞かれました。“技術士”という資格をご存じなかったようです。
「1級建築士という資格をご存じですか?」とお聞きしたら「知っています」という回答でした。
このような回答をするのはこの方だけではないと思います。一般の人々の中では,“技術士”という資格より“1級建築士”という資格の方が知名度が高いと思います。
テレビのドラマで,父親,恋人,友人などの職業として“1級建築士”という役を設定することはありますが,“技術士”という役の設定は見たことがありません。
技術士の資格を持っている者として残念ですが・・・。
“技術士”という資格より“1級建築士”という資格の方が知名度が高い理由の1つは、“1級建築士の方が自分の生活に身近であること”を挙げることができます。1級建築士の方は,住宅やマンションの設計など,一般の人々の生活と直接関係のある仕事をしているからだと思います。
2018年7月22日に掲載したブログ「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー):その2」(こちら)の中で,“今後の技術士制度の在り方について(平成28年12月22日 科学技術・学術審議会 技術士分科会)”の中の一部の内容を紹介しました。
この“今後の技術士制度の在り方について”の中でも「技術士の普及拡大・活用促進」について書いています。
しかし,この中で書いているのは,一般の人々への普及ではなく,公的機関に対する技術士活用の促進です。
技術士法の第2条は技術士の定義です。
この法律において「技術士」とは,第三十二条第一項の登録を受け,技術士の名称を用いて,科学技術(人文科学のみに係るものを除く。以下同じ。)に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画,研究,設計,分析,試験,評価又はこれらに関する指導の業務(他の法律においてその業務を行うことが制限されている業務を除く。)を行う者をいう。
この定義を読むと,技術士という資格は,一般の人々ではなく,公的機関や会社との結びつきが強いことがわかります。
技術士という資格は,一般の人々との結び付きがほとんどありません。これが,一般の人々の中で,技術士という資格の知名度が低い大きな理由だと思います。
しかし,一般の人々が気軽に相談に来ることができる「技術士事務所」があってもよいと思います。司法書士事務所や税理士事務所などのように・・・
実際,10年ぐらい前,弊社に,一般の方が技術的なことに関する相談に来られました。
視点を変えて考えると何か見えてくるかもしれません。